大量の知識に囲まれながら、思う。
世の中にはわからない事が多すぎる。





『秘密の図書館』





高い所にある本を取ろうと背伸びをしている。
それを遠目にがんばれーと心の中で呟き、目当ての棚へと向かった。
そこで関連するものを数冊取り、カウンターへと向かう。
先ほどの棚が気になったので少し遠回りになるのを構わず行く。
サクラはまだ、そこにいた。

「どれ?」

声に気付き振り向く幼馴染の友人に目配せし、本のタイトルを求める。
やったという小声の後、その指は遠慮なく計6冊を指した。
申し訳ないという素振りはあまりない。
そんなのには慣れているから気にもしない。

「ありがと」

薄緑が細く、笑う。

「別に、こんくらい」

本当は、熱心だなとか、頑張るねぇとか、もっと色々浮かんでいた。
けれども本気で頑張っているヤツに向かって言うにはあまりに軽すぎる。
それくらいは一応心得ていた。

他にも借りたいものがあるらしく、あとはカウンターに行くだけの自分も時間を持て余している。
特に深い理由はなかった。
あるとすれば、暇だったからという事だけ。

「分類違うし、探すの手伝うけど」

面倒臭がりの自分にしては、我ながらありえない提案だったと思う。
同じくそう思ったのだろうサクラは目を丸くして、また薄緑を細めて笑った。

「じゃあ、お願いしようかな」

口元に手を当て、眉を下げて喉で笑うサクラも自分も。
瞬間、息を止めた。

特に深い理由はなかった、筈だった。
あるとすれば、薄緑をただもう一度間近で見たかった。
多分、それだけ。

「…何で、キスしたの?」

柔く触れたいだけだった。
多分、それだけ。

「…何で、拒まねぇの?」

おかしな話だ。
特別な感情を持ち得ていない相手に、しかも幼馴染の友人に。

「……わかんねぇ」
「あたしも、わかんない」

今いる場所が公共施設だとか、利用者がいた事とか、すっかり抜け落としていた事にも驚く。
大量の知識に囲まれながら、思う。
世の中にはわからない事が多すぎる。
キスした自分にも。
それを許している相手にも。

「でも、今度したらぶっ飛ばすから」

わからない事は依然多いまま。

「…覚悟しときなさいよ?」

けれども、これだけはわかった。

「……了解」

次回がきっと、あるのだと。





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2008????




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