どうでもいい、というのが十分わかるように、放る。
それは弧を描き、ピンクのリボンは揺れ。





『校舎裏にて』





「春野さん、ちょっと、いい?」

そう言われてサクラは三人組の女に連れて行かれた。
それに気付いたのは多分少人数で、その殆どが一秒足らずで興味を失った。
違和感を持ったのは、多分、自分だけだった。

ひっそりと追いかけた先は人気の無い校舎裏。
上級生が下級生をいびるのによく使われるこの場所。
二階からそれを盗み見る。

「ねぇ、あたしら前にも言ったよね?覚えてる?」

すごい剣幕で左側の女がにじり寄る。
サクラはピンクの髪先を右手でいじくっていて、あまり気にしていないようだった。
気にしているものと言えば…えーと、うん、枝毛くらい?
それにまた女はイライラして、真ん中の気の弱そうな、大人しそうな女の子はビクッと震えた。
右側の女は腕組みをしてガンを飛ばしている。

「だからっ!前にこの子はキバくんの事好きだって言ってんじゃん」
「うん、聞いたわ」
「はぁ?そしたらなんでバレンタインにチョコあげてんの?で、ホワイトデーのお返しとか貰ってんの?バカ?」
「だって、友達だもん」

左右からの攻撃にサクラは淡々と返す。
ごめんなーオレの事なんかで面倒な目にあっちゃって。
思っても出ていけないのは女の世界を知っているから。
女の戦いに男は不要なのだ。男が引き金なのに。

「だってもクソもねーっつの。アンタが貰っても大した意味が」
「…あのさぁ、」

こんな時にこんな質問、ちょっとずれてるけどできれば聞いてほしい。
世界で一番綺麗なものって、なーに?

「そんなに欲しいなら、くれてやるわよ」

ポケットに入っていた小さいかわいらしいラッピングのクッキー。
一応さ、女の子の好みとかを考えて選んだわけよ。
言ってないけど、実は人によってリボンの色も変えてる訳よ。
ヒナタは紫。
いのはオレンジ。
サクラはピンク。
だって、似合うし。

ポケットから取り出した小さなかわいらしいラッピングのクッキー。
どうでもいい、というのが十分わかるように、放る。
それは弧を描き、ピンクのリボンは揺れ。

「何もしてないヤツにグダグダ言われる時間が勿体無いわ」
「…なっ」

誰にもキャッチされなかったクッキーは鈍い音を立てて落下する。
それを見下ろして、サクラは言う。

「そんなんでいいならいくらでもあげるから、さっさと帰ってくんない?」

案の定、女たちは「何ソレー!?超むかつく!」とか何とか言って騒ぐ。
煽るなんて、サクラらしくない。
違和感の正体を見つけて、不要な世界に飛び込む決意を固める。

「ちょっ、サックラー!その扱いはひどくね?」

楽しそうな事してんね、と語尾に笑いを含めて顔を出すと、案の定サクラは怪訝な顔を向けた。
女たちはギャンギャン言いながらも退散して、そこに残ったのはサクラと、自分と。

「んーと、一応それ、サクラ用だったんだけど」

落ちたままの、クッキー。

「うん、ごめん」

さて、ここで先程の正解発表をしようか。

「いのもヒナタもバカにされたから。だって私にとってはアンタのクッキーなんかより、大事なんだもん」
「おー、知ってる」
「それに、キバはこれくらいで怒るような男じゃないでしょ?」
「ま、そうだわな」
「でもごめんね。…許してくれる?」

友達想いの真直ぐな緑。
この世で一番綺麗だと思うよ。

「許さないって選択肢、なくね?」

すげー好きだな。

「ん!ありがと!」

お前のそういうトコ。





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2008????




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