探したって見つからないんだ。
君が嫌いな理由など。





『繋がる体温』





寒いねー。
うん、寒い。
そんなやりとりをしながらキャンパス内を横断する。
総合大学ってとっても不便だ。
端から端まで行くのに何分かかると思ってる。

火曜は三限の講義がいのと被るから昼飯を一緒に食べる。
約束はしてなかったけど、いつの間にかそういう習慣になっていた。
別に付き合ってる訳じゃないけど普通に仲のいい友達だし、楽しいし。
異性と二人一緒にいるだけなのに、いるよねー逐一盛り上がるやつって。
あーやだやだ。
そんな外野の喧噪なんてどうでもいいと、にーっと笑って隣を歩くいのは自分が言うのもなんだけど。

とっても魅力的なおんなのこ、である。

重ねて言うが、別に付き合ってる訳じゃない。
ついでだから言っておくが、別に互いに恋愛感情を持ってる訳じゃない。
昨日なんて、いのの元彼に嫉妬されたくらいだ。アホか。

「今日は学食でよかったわよねー?」
「うん。つかやっぱこの季節、うどん系は外せねーわ」
「あーわかるー」
「あと七味ね」
「え、キバって辛党だったっけ?」
「そんなんじゃねーけど。ま、普通に?」

先週から急に冷え込んだ。
吐く息も早朝だと白い。
先立ってブーツを履いていたいのは、先週の間にコートやらなんやらと次々装備していった。
カツカツとブーツを鳴らして足早に学食へと向かう。
女って露出の為なら寒くても薄着で我慢するってヤツいるらしいけど、いのはなんというか。

秋冬物を上品に着こなすとっても魅力的なおんなのこ、である。

何度も言うが、別に付き合ってる訳じゃない。

「いの、」
「ん、なに?」
「手、寒くね?」

自分はポケットに突っ込んで、尚且つ実はカイロを握っているので相当温かい。
いのの小さな手は元気のない天気のせいか、青白くさえ見える。

「寒いわよ」

見ればわかるでしょ、と視線で訴えられる。
そんな事聞かなくたってわかってる、という事を自分は知っている。
うん、だから確かめたんだ。

「手、繋いでもいいよ」

ポケットに突っ込まれた手は温かい。
どうしてこんなに温かいんだろうね、ってカイロ握ってるからなんだけど。
もしかしたら心が冷たいからかもしれないからさ。
それはイヤだなぁって思ったら誰かに優しくしたくなったんだよ、急に。

勿論、嫌いなやつの手なんて握りたくないさ。
だけどいのは違うだろ。
それどころか、探したって見つからないんだ。
いのが嫌いな理由など。

カイロはポケットの中にさよならして、放したてほやほやの手を差し出す。
空気との温度差に針が刺すような感覚を味わう。
だけど、悪くない。

「いのちゃーん、早く握ってくれないと冷えちゃいますよー」

是非理解して頂きたいので最後にもう一度だけ言うが、別に付き合ってる訳じゃない。
だけど。

「じゃあ、遠慮なく」

そう見えた所で、オレは全然構わない。





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2008????




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