結局オレは守られてばっかで、一度だって守る事が出来なかった。
もとよりオレなんかに守られるほどアスマは弱くないし、アスマを守れるほどオレも強くはない。

ただ、助けられてばかりだったから何かしてやりたかった。
別にそんな『借りたら返す』ような事務的な関係を望んでいる訳じゃなかったけれど。
それでも、さも守られるのが当たり前です、って顔をしたくなかったんだ。

並んでいたかった。
同等でいたかった。
背中を預けてくれる存在になりたかった。
弱音だって愚痴だって聞いてやりたかった。
甘えすら受け止めたかった。

ああ、今ではもう『してやりたかった』と過去の話になってしまう。
悔しい。
今だってどんどん過去になるというのに、こればっかりは。

浅はかだと笑えばいい。
触れた掌も、投げた言葉も、永遠だと思ってた。
終わりが来るなんて思ってもみなかった。

滑稽すぎて笑えない。

もう触れる事すら許されないのだ。
残ったのは形見と思い出。

モノより思い出だなんて言ったヤツは誰だ。

モノは捨てられないし捨てるつもりもない。
けれどもきっと一日が過ぎ一週間が過ぎ一ヶ月が過ぎ一年がすぎていく内に必要性に欠けてくる。
きっと埃被る時がくる。

思い出なんて一日が過ぎ一週間が過ぎ一ヶ月が過ぎ一年がすぎていく内に美化されるだけだ。
あの時キスなんてしていなかったのにしたことになる。

かといって何も無いのも嫌だった。
なんて我が侭だ、自分は。

きっと癒える事のない痛みと形見を抱えながら一年を、二年を過ごすのだ。
そして喫煙者を、自動販売機を見る度にアスマを想うのだ。
たまにアスマが愛用したのと同じ煙草を買い、ふかす訳でも無くただ香りを求めるのだ。
ベッドに入り、目を瞑って彼がよく触れてくれた場所をまさぐっては胸が痛くなるのだ。

そういえば、一度だって言ってやれなかった。
すきだ、と。
あいしている、と。

気持ちなんて曖昧でわからないからと逃げていた。
現に、今だって言える気がしない。

今じゃ後の祭すぎて。

言霊には力がある。
音にすると、その気になってしまう。
そうしてしまったらきっと、アスマを愛し続けなければいけない。
それが嫌なんじゃない。
ただ、そう思い込むことが怖いのだ。
『〜しなければならない』だなんて。

人に好意を抱くことを、強制的になんてしたくない。
例え、きっかけが思い込みだったり勘違いだったりしたとしても。

結局は美化しておきたいのだろうか?
思い出は甘く切ないものにしておきたいのだろうか?

アスマを過去の人にしてしまえばきっと今後は比較をせざるを得なくなる。
アスマより甘い。
アスマより冷たい。
アスマより大きい。
アスマより小さい。
アスマより我が侭。
アスマより。

きっと、依存し続ける。

人は命が終わっても人の心の中で生きているのだ。
その人が忘れなければ、生き続けるのだ。

オレは、アンタを生かす唯一の方法を知っている。
だから今はただ。

オレの中で、眠れ。




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20061121




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