別れ際はいつも無駄話が増える。
それが自分だけなんて思いたくないから、勝手にみんなそうだと決めつける。

もう二度と会えないなんて事は決してないのに。
もしそうだとしたらもっと大事な話があるだろうに。

するのはいつも『そういえば』で始まるただの時間稼ぎ。

昨日のテレビ見た?とか、明日の任務マジ面倒なんだけど、とか。
お互い離れがたいなんて言えずに、出来るだけ目を合わさずにいる。
そういう時に限って、一瞬の沈黙さえ恐れるんだ。
引金は出来るだけ少ないほうがいい。

もうすぐ家に帰らなくてはいけない。
夜だから。

…夜なのに?

アスマはずるいから、自分からは何も言わない。
言わないくせに、行かせようとしてくれない。
目で訴えても、自分が帰らないだけだろなんて言うんだからたまらない。

「何お前、オレに『帰れ』って言ってほしいのか?」

笑いながら煙を吐き出す。
そのタバコが、さぁ。
イラつかせる原因の一つだと思うんだ。

「そうだよ、わかってんじゃねーか」

わざわざそう言ってくれないと、困る。
出来れば長居はしたくない。
ニオイが染み付くその前にさっさとここから立ち去りたい。

今ならまだ間に合う。
脳ミソの隅っこで体育座りをしている意思の肩を叩く。
帰ろう、お願いだ。
懇願さえする。

「おー、じゃあさっさと帰れ帰れ」

痛い痛い、そんなに強く叩かなくてもわかってるって。
しぶしぶ重い腰を上げる。

「じゃあな、アスマ」
「おう、」

叩かれた肩は少し痛いけれど、ちゃんと立ち上がったし、帰り支度までしたんだ。
それなのに。

「また、明日な」

どうしよう。
当分帰れそうにない。




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2009/02/01 書
2009/02/23 上




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