SEXで全てを支配したような気分になる。
人間とは、そんな愚かな生き物です。




『desire』




例えば自分が同じ歳だったら、と思う。
そうしたらもっと楽になれただろうか?
女々しいのは重々承知の上だが、最近はそんなことばかり思う。
ギリ、と歯を食いしばった。
妙な被虐心が消えない。
決して嫌いな訳ではないのだ。むしろ。
…けれども。

思った以上に太陽が眩しくて、思わず眉をしかめた。
カーテンの隙間から零れる光は確実に朝だと伝える。
けだるさが消えない身体を酷く疎ましく思った。
小鳥のさえずりさえ憎たらしい。
だから泊るのは嫌だったのだ。
疲れるからせめて午前からの任務がない日にしてくれとあれだけ言ったのに。
三十路を迎えたアイツが聞き入れるはずもなかった。

布団から何とか這い出し、散らばった衣服を拾い集める。
動きたくないのは山々だが今日は大事な会議がある、遅れる訳にはいかない。
昨晩の行為のせいにしたくはないが、確実に下半身が鈍い。
ズルズルと体を引きずるようにして風呂場へ向かう。
チラリと視線を送ると、大変気持ちよさそうに寝息を立てていた。
その背中が心底憎たらしかった。

「遅い」
「すんません、ゲンマさん」
「…なーんて、三分くらいの遅刻ならいんじゃね?」

お前は普段から真面目にやってるし。そう付け加えて書類を渡された。
本当は遅刻なんてする予定ではなかった。
シャワーを浴びて急いで朝食を取れば何とか間に合うはずだったのだ。
しかし、行き掛けに寝起きの熊に捕まってしまい、あろうことか昨晩の続きを迫られた。
寝起きの悪い人間ほどタチの悪いものはない。
どんなに頑張ってもあの馬鹿力に叶うはずがないのだ。
数分の攻防戦の末、布団の上から急所を蹴りつけてやった。
案の定、敵の身体が強張る。
馬鹿めが。
隙を突いて飛び出した時は五分以上の遅刻は覚悟していたので、ゲンマの言葉は大変ありがたかった。

書類に一通り目を通し、一日のスケジュールの確認をする。
あらためて中忍になってから任務の幅や内容がガラリと変わったと思う。
また中忍試験の係になってからは中忍だけではなく、特別上忍とも親しくなった。
特にゲンマとアンコとは委員の班が一緒だった事もありよくしてもらっている。
決して交流が得意という訳ではないが、知り合いは多いに越した事はないだろう。
近くの壁掛け時計を見ると会議まであと十五分ほど。
下っ端は雑務で何かと忙しいのだ、早く行かねば。

「遅刻した理由、聞いていい?」

ニヤニヤしながら聞くこの人は絶対に確信犯だと思う。
あからさまに嫌な顔をすると、ゲンマは自分の右首を指差した。
瞬間、サァーッと血の気が引くのを感じた。
挨拶もそこそこに、急いでトイレに走る。
後ろで馬鹿笑いが聞こえたが、気にしている場合ではない。
駆け込んだ近くのトイレの鏡の前で息を整えながら覗き込むとなるほど、首筋に赤い点が落ちていた。
深く、深くため息をついた。
不幸中の幸いはベストで見えにくい事だか、こんな。
ゲンマたちには確実にからかわれるだろう。
悔しい。イヤじゃない事が。
この痕が消えなければいいと思っている自分がいることが。
邪念を飛ばすように顔を振り、会議室へと急いだ。



「荷物運び、ね…」

もう七往復はしているだろう。
会議は無事に終わり、何故か一人後片付けに回された。
事務室と資料庫は遠く、出来るだけ多い量を少ない回数で持っていかねばならない。
無機質な部屋の往復で既に両腕は悲鳴を上げている。
会議の資料を片付けるようにと言われ、運ぶことかれこれ二時間。
バカみたいな量を一人黙々と運んでいたのだ、自分を誉めてやりたい。
書類の多さにゲンナリするが、もうすぐで昼休憩になると思うと頑張れた。
荷物を抱え直し、気合いを入れて階段を上った。

「おー、シカマルじゃねーの」

事務室のある二階に差し掛かった所でひょこ、と髭面が顔を出した。
遅刻の原因をつくった、あの。

「あー…お早いご出勤なこって」
「おま…嫌味かよ…」

短く言葉を交わすのはいつものこと。

「アンタ今日は休みじゃねーの?」
「オレ、今から明日まで国外任務だから」

唐突な話を聞くのも、割といつものこと。

「あ、そ」
「…お前さぁ、もちっと『寂しいー』とかねーの?」
「…『明日まで会えないのかーえーマジでーチョーさみしーい』」
「……」
「どーよ?」
「こっちが寂しい…!」

アホみたいな会話だと思う。
けれどもこんな時間がキライじゃない。
キライじゃないからもどかしい。
だって、付き合ってなどいないのだから。

「つーかさ、アンタこれどうしてくれんの」

首筋を指差すと、アスマは頭を撫でながら笑うだけだった。
子供扱いはしないで欲しい。
けれども、この大きくて暖かい手を失いたくない自分もいた。
矛盾している事くらいわかっている。

「オレの愛情表現」

アスマはアホみたいな言葉と香りを残して、じゃあと背を向けた。
階段を下りる後ろ姿を静かに見送る。
タバコの匂いはなかなか消えなかった。

夕方になって日が傾く。
辺りはそれなりに暗くなった。
シカマルは空腹の腹をさすりながら報告書の最後にサインを書く。
身支度をしてアンコに報告書を提出すると、その横でゲンマが手招きしているのが目に入った。

「何すか」
「今上がりだろ?メシ食いに行こうぜ」

しまった。
思うのは遅すぎた。
ゲンマの目が笑っている。すごく。
逃げたい衝動に駆られたが相手はあくまで上司、断わる訳には。

「…イヤ、です」
「ほーう、オレの誘いを断わると?」

やはり、いかなかった。
半ば連行されるようにして定食屋に引っ張られた。

カウンターに座り、隣のゲンマをそっと盗み見る。
黙っていれば整った顔立ちが引き立つ。
顔の両脇まである髪の毛は時折短いながらも風になびくし綺麗な色をしている。
アスマより年上にもかかわらず、アスマより若く見えた。
この男は不思議だ。
冷静なのに、どこか遊び心があって。
人をからかうのが好きで。
いつもどこか在らぬ所を見ているような目をしている。

「あの…ゲンマさん、オレ未成年です」
「知ってるよ。お前が時々アスマとここに来る事」

そして、笑みは不敵。

「……そ、すか」
「奢ってやるよ。好きなの頼みな」
「…ども」

つかみ所のない大人。

「アスマの今日の任務、何か知ってっか?」
「いえ」
「女と寝るんだとよ」

そして、人をえぐるのが好きな、人。

「その話、もっと聞きたくね?」
「……」
「ここじゃなんだから、オレん家で」

箸を動かす骨っぽい手が妙に新鮮だった。
聞きたいかと聞かれても、そもそもアスマとは付き合っていないのだ。
すきだとさえ言われた事が無いし、言った覚えもない。
ましてや付き合う事に何の意味があるとさえ思う。
聞いてどうする。
聞いてどうなる。

「来るよな?」
「行きます」

では何故、聞きたいと思ってしまうのだろう?

演技をしているんだ。
いつだってそう。
大人の男の皮を被った、愚かな。

予定とは大分違い、何故かゲンマの部屋のベッドに押し倒されている現状。
雑多に物が置かれた部屋なのに、ベッドの周りだけは何も落ちていなかった。
生活感のあるのかないのかよくわからない部屋のカーテンはゆらゆらと揺れていた。
時計のカチカチと鳴る音と薄暗さが部屋を支配する。

面倒だった。
何もかも。
ベストを脱がされ、左の首筋を強く吸われた。
まるで挑戦的なそれ。
己の後頭部に回された手は髪止めを弄っている。
スル、と外されて黒髪がベッドに散った。
ゲンマはそれを愛おしそうに梳く。
何度も、何度も。

ああ。
わかってしまった。
この男が何を求めているのかが。

「ゲンマさん」
「あ?」

耳元に息がかかった。
別段気に止めはしない。

「ハヤテさんの代わりなら出来ませんよ?」

ピク。
一瞬身体が強張った。

「…バレてた?」

茶化したような声が切なくて。
泣きそうな顔がオトナ気なくて。
それでも、酷く艶っぽかった。
大人の魅力とでも言うのだろうか?
ズルズルと過去を引きずって、だなんて微塵にも思わなかった。
彼の憂いた眼の中に自分は映っているのか否か。

「アスマとは付き合ってねんだろ?」

だから大人はイヤラシイ。
わかっているのだ、何もかも。

「お前がどこで誰と何をしようとアスマにゃ関係ねーんだよ」

口付けたから好き合ったと思うほど子供じゃない。
知ってる。
身体を重ねたから付き合っていると思うほど子供でもない。
知ってるよ、そんな事。

これはただの甘さ。
都合のいい時だけ子供ぶる、自分の甘さ。

今だからこそ言おう。
アスマと付き合っているつもりだったと。
けれどもどこかでわかってた。
本当は「ごっこ」遊びだったという事を。

「ハヤテの代わりにはしねーからさ、」

ゲンマの眼に映る自分はどこを見ているんだろう。

「慰め合いをしませんか」

問いには無言で返した。



夕方にならないでくれ。
そう願う日に限って一日が過ぎるのは早い。
昨日の事でゲンマと顔を会わせるのが億劫だったが、朝に挨拶したきりだ。
シカマルは誰に聞かせるわけでもなく、自分に向けて溜息をついた。
一人作業室で報告書の整理をしていると入口がガタリと音を立てる。
振り向くと、そこにはアスマがいた。

「お疲れさん」

今一番会いたくない人物だ。
上手く笑えない。
案外早かったんだなと言うとああとだけ返ってきた。
会話が続かない。
いつもは平気なのに。

「もうすぐ上がりだろ?メシ食いに来いよ。で、将棋やろうぜ」

昨日のゲンマと同じ言葉で始まる異なる誘い。
後ろめたいのは何故だ。
首筋がちくりと痛んだ気がした。

パチッ

乾いた音がアスマの部屋に木霊する。
アスマと将棋をするのは好きだ。すごく。
時々真剣そうな顔を盗み見るのも、長考している時の手癖も。
夕飯をアスマ宅で食べ、少し間をおいてからする将棋は既に日課だ。
当たり前のことになっているので、今更コレが壊れるなんて思いもしない。
思いたくもない。

自分は面倒臭がりだ、自負している。
そんな自分がわざわざ面倒臭い事を言おうとしている。
どうかしてる。
こんな風に頭が沸くのはセックスする時とよく似ている。
タガが外れるのだ。
不意に。

「シカマル」

将棋盤という境界線を易々と超え、アスマの顔が近づく。
う、とだけ声を洩らして口を塞がれた。
唇で下唇を挟むようにしてされるキスはキライじゃない。
半開きの口に侵入してきた舌を拒否する術は持ち合わせていなかった。
互いの熱を交換するようにして貪るように口付ける。
舌を絡ませるより上壁を擦られる方がすき。
アスマもそれをわかっているのだろう、望むようにしてもらえた。
身体に力が入らなくなってくる。
将棋盤で多少距離があるので、掴むのはアスマの胸ぐら。
まるで自分からキスをしているように見えた。

「シてもいいか?」

駄目だと言っても聞かないクセに、アスマは必ず聞く。
お決まりの流れだが、今日は何故か妙な違和感を覚えた。

「勝手にしやがれ」

どうとでも取れる返事を返すのに、アスマは止めた試しがない。
まぁ、らしいといえばらしいのだが。
上着を脱がされると一昨日の情事が露になる。
痕の数が増えている事にアスマは気付いた。

「…どうした?これ」

昨日ゲンマさんにつけられたんだよ。
言えるはずがない。
ゲンマの言葉を引用する。

「アンタにゃ関係ねーよ」

この一言は誰かと関係を持ったという事を肯定しているように聞こえる。
アスマの表情が曇るのがわかった。
再度言おう。
アスマとは付き合っていない。
自分では付き合っているつもりだったのだが、こんなのは付き合っているなんて言えない。
それなのに、アスマはまるで自分の物が取られたような顔をする。
アスマはバカだ。
セックスごときで、あんな痕ごときでオレを縛っていたとでも言うのか。
シカマルは苦笑してしまった。
自分もそのつもりだった事に。

鎖骨に歯を立てるようにして舐められる。
乳首は散々弄くり回された挙げ句、何度もしゃぶられプクリと硬さを持つ。
それを片手で転がしつつ、アスマは反応を示すズボンのジッパーを下ろす。
ジワリと先走りがズボンに付着している。
ズボン越しにそれを擦り、駆り立てられるので堪らない。
体温が高くなる。

「…っう、ぁ」

セックスをする時、シカマルは殆ど声を出さないように努める。
それは彼なりの美学みたいなものなのだろう。
声を出すと恥ずかしいだとかそういった類のもの。
シカマルは知らない。
我慢がきかずに時折声が漏れる度、アスマが欲情している事に。

シカマルの熱は未だグリグリと弄くられているまま。
どんどん硬さを増すそれは今にも破裂してしまいそうだ。
高揚して頬が上気している。
アスマはここにきてやっと将棋盤を退かし、シカマルとの距離を詰めた。
食べてしまいたい、と思うのは比喩表現ではないと思う。
上がる息遣いも、成長途中の身体も、物欲しそうに揺れる熱も、細い足も。
すべて口に含んで味わってみたい。
思うと身体は止まらない。
抱きさえすれば自分のモノになるだなんて、そんな浅はかな考えは大人になる時に捨ててきた筈なのに。
誰にも身体を開けないようめちゃくちゃにしてやりたいと心から思った。
たかだが十五歳に翻弄されるなんて思いもしなかった。

ベッドまでの距離は左程ない。
シカマルの背中を気遣い、ベッドまで誘導する。
ギシ、と鳴くベッドは行為を受け入れた。

「シカマル、足、開け」

シカマルをベッドに座らせ足を開くよう指示する。
恥じらいなんて言葉は似合わないが、それでも少しは興奮しているようだ。
脱ぎかけのズボンが足に絡まったままなので上手く開かない。
それをズルリと下ろし、迷う事なく熱を頬張った。

「あ、ぁうっ…!」

シャワーを浴びていない。
フッと頭をよぎる。
そのままだと独特の体臭があるのだ、それがとても恥ずかしい。
シカマルなりの美学が行為の続行を許さない。
アスマはひざまずくようにして下肢の間に入り、根元を左手で押えて嘗め取る。
ゴツゴツした右手で太ももを掴まれているので足を閉じる事ができない。
頭から根元の裏の隅々まで綺麗にするかのように、ちゅ、ちゅとわざと音を立てて吸う。
時折眼が合うとニヤリとした表情をするアスマにシカマルは少しの被虐心を抱いた。
この余裕のある顔が気に食わない。
大人だから、とかは関係ない。
自分みたいな子供に余裕のない表情をするのを見てみたい。
思いは決して口に出さず。

先端を舌先で愛撫されるのは頭がおかしくなりそうなほど。
悔しいが、どう足掻いても相手は大人。
しかもアスマは相当の手練なのだろう、多分。
よすぎるから危険だ。身体がざわつく。
先ほどから頭を撫でて次を促すのに、アスマは全く止める気配がない。
こういう時に起こる感情というものはいきなりドッと湧き出てくるものだ。
慣れてしまっても、一度恥ずかしいと思えば一気に身体が熱を放つ。
今がまさに、それ。

「…ッスマ、……も、い…ぃ……っ!」

飽きる事なく同じ部分を何度も攻め立てられる。
不意に歯を立てられた。

「ぃっ…んぁ、…っ!」

ビクビクッと身体を反らし、アスマの口で果ててしまった。
あろう事か、アスマはそのまま飲み込んだ。
喉が上下するのが見えた。
卑猥だ、とても。
足を広げたままベッドに仰向けになる。
なんて間抜けな格好だ。
射精の余韻で身体が痙攣している。
右腕で顔を隠す。
こんな時の顔は一番見られたくない。

「シカマル」

アスマの重低音は身体に低く響く。
ぞくり、と。
脊髄を走るのだ。

「昨日の夜、何してた?」

声に縛られる、とでもいうのだろうか。
動けない。
声すら出せなかった。

「バカなこと考えんじゃねーぞ?」

答えを待たずして出た言葉は何とも身勝手な独占欲。
ギラリとアスマの目が揺れたように見えた。
その後は無言で新しい痕を付けていく。
顎の下、首筋、鎖骨、胸、腹、腿…身体の前半分のいたる所全てに。
ちぅ、と肌を吸った音、そして舌舐めずりで光った唇がヤケに情欲をそそる。
胸の下部から喉までせりあがってくるこの感覚は何と言えばいい。
背筋をピンと張りたくなるような、この。

四つん這いにさせられると、解すようにして後ろから太い指が侵入する。
アスマの唾液でヌルリと入っていったが、この感覚にはいつまで経っても慣れない。
慣れたい訳でもないのだが。
ゆっくりと広げるようにして指を出し入れされる。
もともと何かを入れるような器官ではない。むしろ本来は排出専門なのだ。
男の身体は女の様に何かを受け入れる準備なんて出来ちゃいない。
アスマは近くの棚からチューブを取り出して適量指に絡み付けた。
再度指を侵入させ、中に塗り込むようにして解していく。
ぐちゅぐちゅと水っぽい音がするのは酷く倒錯的。
余裕が出来たのか、指をもう一本増やされた。
指はばらばらに動かされ、思考が出来なくなる。
全てにおいてどうでもよくなるのだ。
残ったのは本能という名の性欲だけ。

やっと後ろが受け入れる体勢を整えたというのに急に指を抜かれた。
今まであった圧迫感がいきなり無くなったので、何か物足りなさを感じる。
後ろを振り返ると、アスマはベッドサイドに座ってこちらを見ていた。

「いい格好だな」

その言葉で一気に体温が上がる。
消えかけていた羞恥心が舞い戻り、身体を震わす。

「こっち来いよ」

誘われ、言葉に従いアスマを跨ぐようにして向かい合って座った。
この方が抱き合うと顔を見なくて済むので幾分マシだ。
ゆるりと体重を落とそうとすると、アスマのごつい手に腰を掴まれた。

「お前のその顔、すげーいい」
「…っせ」
「その物欲しそうな目とか」
「っ!黙れ」
「すげーそそる」
「くたばれ」
「それは無理だな」

なかなか手を離してくれない。
身体の疼きがダイレクトに伝わってしまう。

「はっ、何腰振ってんだ?お前、相当エロいのな」
「…っと、マジ、で…!」
「何が欲しいんだ?言ってみ?」

もしかしたらこの男はサドの気があるのかもしれない。
こちらを見る目が凶暴だ。
感情的になってしまう。

「アス…ッ…マ、頼む……から…っ………」
「あ?」
「…焦らすな」
「お前が早く言えばすぐにでも」
「アスマが」
「オレが?」
「ほしい」
「なら自分で入れな」

満足そうな笑みを浮かべ、ぱっと離されて重力に逆らわずに落ちる。
硬いモノが当たり身体が跳ねそうになった。
膝立ちになり、アスマのモノを支え、入口に宛てがう。
先端の膨らみはグイグイと押し広げながら侵入していく。
フッと浮かんだ一つの提案に内心ニヤリとしながら一気に体重を落とした。

「う、ぁっ、シカ…」
「いっ……!」

自分にもダメージはあるが、出し抜けたようで嬉しい。
アスマの刹那の表情は今回の収穫だろう。

「ザマーミロ」

それだけ残し、アスマの首に腕を回して腰を揺すった。
一連の動きを下で受けていたアスマは気を取り直してシカマルの動きに合わせて下から突き上げる。

首の横で荒く息を吐いていたシカマルは肩口に噛み付いた。
既に痴態を晒しているというのに、声を出すのがそんなにイヤなのだろうか。
今更なのに。
それで済むと思ったら、背中に爪を立てていた。
揺らす度、揺れる度、10本の爪が背中で牙を剥く。
首を回せば丁度シカマルの耳元にくる。
そこに情欲に濡れた言葉を吹き込んでやると、シカマルの動きが変則的になった。
耳を甘噛みし、舌を這わす。
聴覚からも刺激を受けているのだ、シカマルはもうすぐで絶頂を迎えるだろう。
ちょん、と先端に触れてやると腹に生暖かいモノが飛び散るのがわかった。
そして声にならない奇声と共に、背中にあった両の手が勢いよく下へ下りた。
その痛みと共に、目眩がするほどの締め付けでアスマは勢いよくシカマルの中にぶちまけた。
一瞬だけ、意識を失いかけた。



行為が終わり、暫く布団の上でぐったりしていたシカマルの髪を掻き揚げてやる。
汗ばんで髪の毛が顔に張りついていた。
視線が何かを訴えているが、何だと聞いてやるつもりはなかった。
アスマはただ、その真っ黒な髪に手を絡ませていた。

「アスマ」

不意にシカマルが口を開く。
腰は痛いし声を出すのも面倒くさい。
けれども、頭は沸いたままだ。

「オレ達は付き合ったりなんかしてねーよな」
「…ああ、そうだな」

どうかしてる。

「だけど」

本当に、どうかしてる。

「今日からアンタをオレのモンにするから」

セックスの後にアスマは煙草を吸わない。
そんなアスマがどうしようもなく。

「それは、無理だな」
「何で?」

キライじゃないんだ。

「お前はずっと前から、オレのモンだから」

視線は合わなかった。



歳がどうとか、楽とか苦しいとか、もうどうでもよくなってしまった。
同い年だったら逆に出会えていなかったかもしれない。
杞憂でいい。この気持ちは。

抱きながら剥き出しの独占欲を見せていた事に大人として反省した。
しかも十中八九、痕はあっても行為はなかったのだろう。
感情が昂ると、どうもいけない。

気持ちなんて、見せなきゃわからないし、伝わらない。
口に出さなくたって伝わるものもあるかもしれないけれど。
口に出さなくっちゃ伝わらないものだって確かにあるのだ。
例え無数の痕を散らしたって、時が経てば消えていくのに。
例え歯形と爪痕があったって、時が経てば消えていくのに。
わかっていたんだ、本当は。
「ごっこ遊び」だったってことくらい。

痕を残すという行為はなんの牽制になろうか。
気にしなければそれで終わりだろう。
そういう意味合いではないんだ、きっと。
例えるならば、身勝手でどうしようもない独占欲とか、動物のマーキングという習性とか。
人間も、所詮は動物ということなのだ。
仕方ない。
仕方ないんだ。
この欲という名の本能には逆らえないのだから。
どう足掻いたとしても。




*****

『イルバチオランチャー』の加持ヒナさんに献上。
ヒナさんか背景黒にして下さったのでまねっこ!
一応R指定だったので献上と自サイトへの掲載に若干の間がありました。笑

060801




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