大事なものってさ、案外身の回りにあるんだって。





アスマが珍しく自分の指を見ている。
自分の手はゴツくてあまり好きでは無いと言っていたのに、今日はとても気にしている。
少なくともそんな風に、感じる。

骨張っている部分も、長くガッシリしたそれも、決して嫌いではないのに。
そんな事、まかり間違っても言うつもりは毛頭無いが。

「なんかあった?」

何も無いという回答を予想して、でも聞くのは多分性格が悪いかもしれない。
けれども日常会話って、決行そういうもので成り立っていると思うんだ。
何も考えずに出た言葉も、誘導仕掛けの言葉も、期待を込めた言葉も、色々あるけどさ。

「いやぁ、ちょっと爪の白い部分を広くしたいなぁと」
「何だよ、マジどうでもいいな」

言って、でもそれが本当の事だとは思わない。
おもむろに手を取るフリをして指に触れる。
当たり前のように違う大きさに年齢の差を実感する。
深爪した中指に少しの羞恥を抱き、形の悪い親指の爪に少しの不安を抱く。
そんな事、まかり間違っても言うつもりは毛頭無いが。

「風呂上がりに爪切りで切れば?」

変わりの提案はただの荒療治で、そんなもので望む様な答えを導き出せたとは思わない。
それでも。

「おー、じゃあ今度やってみるわ」

ぶっとい二重を更に太くして笑うから。
不意に泣きたくなった。

…そんな事、まかり間違っても言うつもりは毛頭無いが。





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20090826




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