好き過ぎて何もできない

ゆらゆら揺れるその茶色いねこっ毛を触りたいなぁと思って手を伸ばしてみる。
すると触れる寸前でこちらをくるりと向くものだから、慌てて手を引っ込めるしかなかった。
どしたのと言われてどうかしてたと返すと頭の上には『?』マークが飛んでいた。
今思えばそんな青くさい位が丁度よかったんだと思う。
こうしたら相手はどう思うだろうか、だなんて考えなくてよかった。
自分の事で精一杯だったから。
でも嫌われるのが怖くて嫌いになってほしくなくて頭を捻るようになってしまった。
一度山を上ったら後は下りしか残っていないと考えると恐怖だ。
だから面倒臭い事この上ないが、山を作り続けるしかない。
それなのにそれすら上手くいかない。

どうしたらコイツは笑うんだっけ。
どうされるのが嫌なんだっけ。

どうしたら。

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現実味のない日常

毎日1つの部屋に隠ってアホみたいにセックスばっかしてたらどうだろう。
だるだるの下半身をぶら下げて呼吸乱して互いを求めあうの。
きっと三日で飽きちゃうね。

正直セックスなんてしなくていいしなんならキスだってしなくていい。
世間体で言うおつき合いというものをしてないから手だって繋がなくていい。
愛を囁くなんてこっぱずかしい事も勿論しなくていい。
ホントに何にもいらない。

いっつも一緒にいたいとかも実はそんなに思ってなくて、たまに会うくらいでいい。
会えない時間がなんとやらという訳ではないけれど、たまーに会うくらいでいいのだ。
会おうかと約束したら会える距離にいて、それでいていつも一緒という訳でない微妙な距離。
この一定の距離を破壊してしまうと多分きっと醜い感情でいっぱいになる。

空が飛べたらいいのにね。
そしたら高いトコからちっぽけな自分を第三者の目でもって見下ろしてやれるのに。
三大欲求全てを投げ打ってのうのうと生きている自分を見つけたら即座に踝チョップを喰らわせる。

だめだなぁ。
たった三日で妄想癖。
一週間もあれば戻ってくるよと笑った笑顔が懐かしい。

あと半分もあると思えばいいのか。
あと半分しかないと思えばいいのか。

だめだなぁ。
なんて世界はつまらない。

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その背中を蹴り飛ばして

しまいたいと思うよ。
普段比較的温厚な自分がそう思うんだから多分きっと間違い無い。

何でそんなやつと喋ってんの!とか言って、
赤ちゃんみたいにひたすら泣き叫んで、
ちびっこみたいに聞き分けなくて、
子どものように被害者ぶって、
大人らしくできっこない。

理不尽な要求を叩き付けて困らせるので毅然とした態度を取ると逆上するその哀れな背中を。

蹴り飛ばしてしまいたいと。
思うよ。

嗚呼。
この世に神様なんてものがいるとは到底思っていないけど神様がいるとしたら、どうか。
理不尽で塗り固めてしまったこの攻撃的な気持ちをどうか、鎮め賜へ。

無理な願いだってことくらいわかってる。
だっているとしたらこの世じゃなくてあの世だもん、ね。

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理屈なんて抜きで

「ラッキーセブンなのだよ今年は」

言われ、あまりピンと来なかったのだがおよそ4秒後唐突に理解した。
だからどうした、という視線を向けてやる。

「盛大に祝え」

仁王立ちで何をまあそんなに自信ありげなのだろう。
けれども残念ながらそんな笑顔を向けられると己のまともな思考回路は意味を為さない。

「いいとも」

意味なんて、ない。

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素直じゃない君

おいで、なんて言おうものならどちらかと言えば犬のクセに猫のような慎重な目をする。
おいでおいで、怖くないよーそうそう怖くない、怖くないったら。
まるで野良猫に必死になるただの通行人のように不自然な様子だってことくらいわかっている。
けれども今まで懐いていたやつが急に態度を変えると誰だって気になるってもんだ。
気にしてほしくてそうしているならまだしも、一度だってそんな気の引きかたをされたことがない。
全く、人間相手に何をこんなに手こずっているのだろうと思う。
まさか人間相手だからという訳ではあるまいな。

おいでおいで、怖くないよーそうそう怖くない、怖くないったら。
ただお前の頭を優しさを持ったこの手で梳きながら撫でてやりたいと思っているだけ。
抱き慣れないこの腕でゆるりと抱きしめてやろうと思っているだけ。
ただ、それだけ。
だから、こっちおいでって。

こんなに言っているのにまだ近づいてくれやしない。
けど、お前のその疑り深い目が。

「シカちゃんが来てよ」

嫌いじゃない。

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07/07/07
『キバくんのお誕生日。』
謝々:無差別アウトロー





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