タイトルから直通リンク。
キャラクタ名記載タイトルはUP済。

髭/&紅
まつげ/&アスマ
ホクロ/&キバ
唇/&アスマ※[まつげ]の続き
手/&キバ
極彩色のけものたち/&キバ
枚挙に遑がない/&アスマ
戯れの戯言/&アスマ
アナフィラキシー/&アスマ
楚々/&キバ

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first→『髭/&紅』


















































 


!ATTENTION!

・いつもより勢いで書いている&推敲をしていないので全体的に粗い
・アスマがいなくなった後のはなし
・紅があまりすきではない人は不向きな内容
・例の話ど真ん中なので、皆さんと捉え方が違う事をご理解下さい。

以上を読んで、読む気がある方はしばしスクロールプリーズ。




















































髭/&紅

女はその唇を動かして言う。
ひとつだけお願いがあるの、と。


火の意志を師から受け継いだのだ、このままじゃいられない。
そう言った作り笑いもきっといびつで、見れたもんじゃないだろう。
それでも、アスマが死んでからはほぼ毎日のようにアスマの墓に行った。
墓参りなんてしたくなかった。
だから会いに行くという名目で、行った。
その後、自分の罪を許して欲しいと請うように、それを口に出さずに。

紅の所へ、通った。

その身体に宿る命に、魂に、全神経を捧げて祈る。
そして詫びる。
腹が目立つようになってからは、尚更。

お前の父親を自分は守れなかったと。
力不足の不甲斐ない自分が上手くサポート出来なかったからだと。
いっそ自分以外の者が一緒にいたほうがよかったのだと。
そうしたら、もしかしたら死ななかったかもしれないのだと。
アスマはお前を抱き上げる事がかなったのかもしれないと。
何一つ知らずまだこの世も見ていない生き物が宿る前で、見苦しく、何度も己を責めた。
紅は何も言わず、ただその行為を見ていた。





「オレを一生許さないで下さい」

アスマの死を知り、シカマルが敵討ちをした後に初めて紅を尋ねたシカマルが言った言葉だった。
そんな事、言われなくても。
誰に向ければいいのかわからない激しい憎悪を感じ、何度も嘔吐した。
喉の奥が割けそうになるまで涙を流した。
自分は体内にもう一つの命を宿している。
それは今、全力で護る存在。
母体がこんなに不安定であってはいけないと分かっていても、苦しい。
それでも変わらず朝はやって来て、死は人に平等で、生も人に平等だった。

「残念だけど、それは出来ないわ」

いつかの彼の願いを撥ね除ける。
腹が目立つようになってから、ようやく気付いたのだ。
遅くはないだろうか。
不安になる。

「………なんで、ですか」

顔を上げられないのだろう、声は聞こえ難かった。

「あなたが憎くないからよ」
「………オ、レは…っ!!」
「シカマルは、傷つきたいの?傷つけてほしいの?憎まれたいの?」

だってそんなに自分を責めてしまうくらい、自分を許せなかったんでしょう?
誰かに憎んでもらえないと生きるのが苦しいくらい、辛かったんでしょう?

そうなるくらい、アスマの事が大事だったんでしょう?特別だったんでしょう?

「あなたが憧れた男が選んだ女よ。…見くびらないでほしいわ」

アスマとの関係は、多分気付いていた。
なんとなくから確信に変わるのは、正直迷った。
けれども。

「あなたがいてくれて、よかった」

彼が大事にしたものを、自分も大事にしたい。
嫌いになんて、なれない。
今となっては勿体無い。
どうせなら、彼の分まで大切にしたい。

シカマルは己を責めて十分傷ついた。
自分が責める隙もないくらい、ズタズタに傷ついた。
それは彼が望んだ傷であったとしても。
癒したいと、それが叶わぬならせめて包み込んでやりたいと。
思ったのだ。

それは紛れも無く『愛』だった。





未だ顔が上げられない。
自分はアスマに対しても彼女に対しても失礼な男だったと思った。
頭の中は処理が追いつかず、ぐちゃぐちゃなんだ。
いっそ自分の都合にいいように解釈しよう。

アスマはきっと、紅が自分を責める事も、自分が自分を責める事も、望んではいない。
紅は自分のアスマへの気持ちを知っていながら、それを許してくれている。
…じゃあ、自分は?

「オレは…傷つきたいのかも、しれません。……憎まれたいのかも、しれません」

唇が震える。
拳を握り締めて言葉をひねり出す。
爪が掌を刺した。
痛みはない。
この胸の痛みに比べれば、全然。

「許してほしいし、いっそ許さないでほしいと思ってます。どっちなのか、どっちでもないのかすら分かりません」

誰に言うわけでもなく、それでも心が叫んでいる。
たすけてくれ、と。

「…そう。じゃあ、どうしても何かにしがみつきたいというなら…」

女はその唇を動かして言う。
ひとつだけお願いがあるの、と。

腕がこちらに伸び、綺麗な長い人指し指が自分の顎をなぞる。
くすぐったい。



「伸ばすのは結構だけど、アスマみたいにはしないで欲しいの。…バカみたいなお願いだけど」



やわらかい笑みを含んだ声に、目の奥がじゅわっと熱くなって、喉が痛くなって、鼻の奥が収縮する。

「それで、いいかしら?」

かなわないなあ。
女って、男が思っているより、強いんだ。

「…そんなんでいいなら、いくらでも。…いつまでも」

なぁアスマ。
アンタが愛した女はすげぇな。
オレも、アンタが愛したもの全部、愛したいな。

…できるかな?





目の前で身体を丸めるシカマルは、この身体に宿る命に、魂に、全神経を捧げて祈る。
何を?
それは知らない。
わからない。
だけど。

「シカマル…また来たの?」

呆れ顔で迎える日々を、彼が喜んでくれると、いい。

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2008/10/02

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まつげ/&アスマ

もし、そういう間柄だったら。
そしたらあったかもしれない可能性を、今はないものとして考える。
きっと、それが正しい。

「あ、イタ」

ひゅう、と一瞬風が強く吹いた直後だった。
声に顔を上げると、盤の反対側でキツそうに片目を閉じていたのでどうしたと聞いた。
目に、まつげ、入った、かも。
途切れ途切れの言葉と駒を取り落とすほどの俊敏さに些か必死さを感じる。
他人事だが、そうなった時の辛さはわかってやれる筈だ。
荒々しく目を擦る腕をわしりと掴み、ポーチから鏡を取り出す。

「傷になるからあんま擦るな。目、洗いに行くか?」

差出しながら言うと、シカマルは黙ったまま受取った鏡とにらめっこしながら首を振った。
親指と人指し指で容赦なく開眼させられた瞳は乾燥した空気で痛いだろうに。
それよりも、どこにあるかすらわからない、たった一本の小さな存在に脅(おびや)かされている。
上下左右にギョロギョロと動かされる眼に、形容し難い快感を得る。
その白くて柔くて丸くて程よく水気のある、それ。
薄らと赤のグラデーションができた、そこ。
喰ってしまいたい。
きっと、おいしい。

そんな事を考えていたからだろう。

大丈夫か?なんて適当な台詞を吐いてまんまと覗き込む理由を得、その赤に釘付けだった時。
あちらから可能性がやって来た事に、気付くのが遅れた。

軽い音を立て、素早く離れるのをただ眺めているだけしかできない。

もし、自分達がそういう間柄だったら。
そしたらあったかもしれない可能性を、今はないものとして考えていた。

でも。
きっとそれが正しい、と。

「アンタさあ、結構無防備だよな」

思っていたのは、自分だけだった。

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080901

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ホクロ/&キバ

喉元にあるそれは物言わぬメッセージに違いない。

「お前死ねばいいよ」

折角の可能性の提示を、数秒待たずして却下された。
バカかアホか脳味噌腐ってんのか。
続く言葉は辛辣すぎて。
でももう慣れてしまったからそんなに痛くない。

「死なないね!100歳まで生きるね!それどころかお前の葬式にも行くね!」

いつまで生きるか知らないが、皆が涙で暮れる中、ひとり笑ってやるんだって決めてんだ。
だからお前は安心して死ぬがいい。
オレは悲しんじゃいないから、この世に未練なんてひとつと残さず逝けばいい。
どうせオレだってすぐ行くさ。
長くたって100年そこらだろ?
そんなに待てないなんてきもちわるい事言うなら別だけど。

「は?全身全霊かけて拒否ってやるっつーの」

無意識に指が浅黒に伸び、爪で柔く引っ掻く。
そんなになぶっちゃ駄目だよ。
万が一消えたらどうすんの。

「あ?ヒョロ男の全身全霊なんてオレの気力でゴリ押しするし。めっちゃ本気だし」
「ヒョロ男っていうな」
「もっと喰えバカお前細すぎだしこの骨皮ヒョロ男!」
「名前っぽくすんな」

指が離れ、髪に移動を開始したそれを合図に両肩の固定を試みる。
戯言の隙間に滑り込み、ぽっかりと空いたそこに食らいつく。

顎の下、耳の真下の骨近く。
狙いを定めて歯を立てる。
ビクリとした反応に気を良くし、ごめんねを込めて舐める。

「…痛い」

諦めが早いのは昔からの悪い所だと思う。
腐っても忍者のくせに。
もっと貪欲になればいいよ。
きっと、オレに死ねなんて言えなくなる。

傷つけられる痛みは喜びに。
傷つける痛みは悲しみに。
でもどちらももう、わからなくなってしまったから。

「大丈夫、痛くない。オレの方が痛いから」

諦めが悪くなればいいな。
貪欲になってくれればいいな。
そしたらオレは痛みを思い出せるし、お前は痛みと向き合える。

それまでずっと噛み続け、お前に痛みを与えてやるんだ。

忘れなければいいな。
意識すればいいな。

薄い皮一枚に浮かぶ浅黒に薄紅の縁取り。
喉元にあるそれは、物言わぬメッセージに違いない。

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080918

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唇/&アスマ

分厚くて少し固そうなそれに掠る程度、触れる。
無意識に薄らと開けられたそれに触れたいと思うのは極々自然な事だ。
他意などない。
だから、やった。
突然の行為に目を見開いてこちらを眺めるそれはとても非日常的で、ふわふわしている。
何かおかしい事でもあったかのような顔をされ、困惑する。
何がおかしいのか既に自分でもわからなくなってきている。

きっと、それ自体がおかしいのだろう。

「…そうか?」

まだ感覚の残るであろう唇を一撫でし、先程の行為の事実を確認したそれを見やる。
じわ、とほんの少しの安堵に若干の余裕が生まれ、ひねり出された問いに短く答えた。
ああ、と。

「そうか…」

先程と同じ言葉を、今度は抑揚を変え零す。
それにまた先ほどと似た様な感覚が芽生え、気が付いたら太い腕を掴んで静かに放っていた。

「そう、だ」

例えばこの先また同じ事を繰り返して、
今度はそれに堪えられなくなって、
常識を捨ておいてまでほしいものが手に入れられる状況があったとして。
きっと互いに歩を進めるだろう、それに悔いはないだろう。

不完全の美がこの世にあるとして。
でもそれはきっと両腕のない女神に留まる。

食べかけの林檎は虫がたかって絵になどならないし、ましてや美なんて生まれない。
だからオレは願うんだ。

「でもお前、」

腐る前にかっ喰らってしまえ。

「人の事言えないだろが」

ゼロもきっと、美のひとつ。

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080918

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手/&キバ

ちりちりと太陽が痛い。
天気がいいのは誠に結構なことだが、汗がだらだら止まらないのは困りものだ。
そんな太陽はお構い無しに、飄々と涼しげな顔をするキバを見やる。
何でこんなに楽しそうなんだろうと思い、眉の皺を一層深めた。

「そんな顔、しなさんなって」

グリ、と。
柔く汗をかいた掌が、指が、眉間に押し付けられる。
グリグリ。
ニッと歯を見せ、お前は夏が嫌いそうだなと笑われた。
そうだな、こんな理不尽な攻撃を受ける夏はどちらかと言えば好きじゃあない。
すると何故かまた笑われた。

「うん、でもお前は嫌いでいいよ。お前の分までオレは好きって事で」

眩しいのは太陽なのかこいつなのか。
逆光に目を細めた。

「そんでいいだろ?」

じゃあ、オレは。
太陽が嫌いなオレの分まで好きだというお前のこの汗ばんだ掌を。

「…いんでない」

すきだと言おうかと、思った。

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08.09.11 up

Thanks.
無差別アウトロー





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