81.足下

珍しくシカマルが頼みごとをしてきた。
なんだかそれが嬉しくって、ついつい調子に乗ってしまう。

「明日からの昼メシ一週間分で手を打ってやるよ」
「人の足下見てんじゃねっつの…」

しぶしぶ言いながらも迷っている。
そんな君にナイスな提案がございます。

「んじゃ、シカマルからちゅー7回分」
「乗った」

お前さ、自分をもっと大事にしようよ。

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2006/09/09




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82.暗闇

「ア、スマッ、も…いい、から……」
「っは………す、…げ、シカマル」
「…あっ!っつぅ…」
「大丈夫か?」
「マジ、でっ……も、かんべ、ん……」
「ピンポンこんばんはーカカシでー……すってアスマ?いる?」
「カカシ!?」
「何で暗いんだ?電気つけるよー?」
「あ?無理無理今お取り込み中だから…」
「ポチッとな」

パチッ

「…何やってんの、お前ら」
「ん?闇鍋」

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しょーもない。

2006/08/02




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83.仲直り

「喧嘩っていいよな」
「何で?」
「前より仲良くなれるから」
「ふ〜ん…じゃあ、喧嘩する?」
「出来れば避けたい」
「だろ?」

だって、仲直りしたばっかだし。

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2006/10〜 あたりに制作
2006/12/30 up




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84.言いかけた言葉

珍しく眠っている。
キバが眠る所を見た事など、オレは殆どない。
そうだろう。
普段はオレが寝てばかりいるのだから。

本当はネコっ毛な茶色の髪。
太陽に照らされてキラキラと光るそれは、触るとすごくキモチがいいんだ。
いつもはあのファーのついたフードの下に隠れているけれど。
折角目の前にあるというのに、触らない理由などない。

ふわ。
指先の柔らかい感覚がたまらない。
起こさないように、できるだけ優しく触れる。

「…オマエって、」

声に出していたらしい。
茶色がピクリと揺れた。

「…なぁに?」

しかも、寝起きだというのに御丁寧にも返答まで。
まさか、狸寝入りじゃないだろうなお前。
茶色から手を離し、行き場を失った手は暫く空を彷徨った。

「髪、伸ばさねぇの?」
「あー…オレは似合わなそうだからパス」
「んだソレ。オレの髪みて長いのがいいとか言ってたクセによ」
「オマエは、って事。短いのよりは長い方が似合ってそうだから」

オマエって、オレのコトどう思ってんの。

本当に聞きたかった言葉は呑み込んで。
もう暫くは、どうでもいい話をする羽目になった。

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2005/09/10




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85.天井

ひとつ。ふたつ。みっつ。
シミを数えていた。
落ち着けるはずなどなかった。

ついさっきまで将棋をしていた。
いつの間にか天井を向いていた。
そこに脈絡などあるはずもなく。

「何してるんですか、センセイ」

Tシャツの裾から手が侵入してきて少しだけ汗ばんだ自分の肌がぴくりと動く。
行為に意味なんてない。
そうだと思いたい。

「今から授業を始めます」

一体なんなんだと思う。
これは何か。
何かのプレイか。
アホみたいな思考しか頭の中を動いてくれなくて、考えることすら馬鹿馬鹿しくなってしまう。

夏なのだ。
暑いし、扇風機しかないこの部屋でわざわざ身体をくっつけなくたっていいと思う。
それなのに、上にいる人間はすごく柔らかい顔をしてこちらを眺めている。
ついつい背中を預けているものが畳だということを忘れてしまう。
どうだっていい、なんて言えば嘘になるけれど、殆ど身体を投げ出した状態だと言うのは確かだった。
半開きの口が塞がれる。
ばっか、してほしくて空けてた訳じゃねっつの。
人間は大抵上を向くと勝手に口が開くんだっつの。
今度からもうちょっとキバにならって顎にいい固めのものを噛もうかな。
スルメイカとか。
状況と全くもって噛み合っていないことを考えつつ、次の行為が何なのかを知っている身体が素直に動く。

一体なんなんだと思う。
この行為が、心地よいと思ってしまうなんて。

ひとつ。ふたつ。みっつ。
さっきからそこで数えるのを止めてしまう。

集中なんて、できやしない。

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2006/08/02




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86.距離感

手を伸ばせば届くこの距離がもどかしい。
きっと、世界中の恋する誰もがそう思っているんだ。

ドラマとか、小説とか、漫画とか。
いつだって文字どおりドラマチックに恋愛をしている。
それを見て憧れる人達はいるけれど、僕はどうしても歯痒くてならなかった。
けれど、いつかシカマルが言ってた。
『事実は小説より奇なり』
本当にドラマチックなのは、恋をしている本人達だって。

当の本人というべきか、僕は今『恋』と言うやつをしている、らしい。
らしい、というのにはちゃんとした理由がある。
僕は自分が恋をしているのかがわからないからだ。
他人から見れば『恋』をしているらしいけれど、当の僕にはその実感などまるでない。
笑っていて欲しいと思うのは当たり前の感情だし、人が喜ぶ顔が好きだから喜ばせてあげたいし。
みんなはどうやって『恋してる』だなんてわかんだろ?

僕といのは近くて遠い。
遠くて、でもとても近い。
幼馴染みってそういうもんだ。
誰よりも相手の事を知っていて、誰よりも知らないんだ。
矛盾してるっていうのはわかるけど、こういう言い方が一番しっくりくる。

キバが言うには僕はいのに『恋してる』らしい。
いつもはアホみたいにギャーギャー騒いでいるキバが、その時ばかりは至極真面目な顔をしていた。
キバはこういうことと天気予報だけは無駄に正確だ。
そんな彼が言ったんだ、きっとそうなんだろう。

「チョウジは、さ」

帰り道、いのが何気なく切り出した。
僕が相槌を打つと、少しためらってから続けた。

「すきなひと、とか いないの?」

瞬間、僕は「恋をする」意味がわかった気がした。
ああ、なんて厄介だ。

僕といのは近くて遠い。
遠くて、でもとても近い。
幼馴染みってそういうもんだ。
だから壊したくないんだ、この関係を。 この空気を。
誰も持ち得ない、この特権を。

近づきたいのに近づくことが怖い。
否、離れる事を恐れているから近付けない、か。
記憶がフラッシュバックする。
近づきすぎてしまったら、あとは離れるしかないから。

少し視線を泳がせて僕は口を開く。

「い……る、かな…」

語尾は消え入りそうだった。
それに返事に少し時間をかけてしまった。
どう思われたのだろう。

「……ふーん…」

いのの瞼がほんの少し下がったのを、僕は見逃さなかった。
少しでも憂いてくれるといい、なんて、なんとも身勝手な事を考えながら。

「うまくいったら教えてね」

言いたい事も言えず、僕はまだこの微妙な距離を保ったままでいる。

「うん」

『そのままでいい』なんて、甘い考えを持ちながら。

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2006/05/06




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※7/7のつもりで読んで下さい。

87.今必要としている物

喉から手が出るほど欲しいものってなんだ。
誕生日、七夕、集中豪雨。
そんな中、僕は星なんて見えない空を仰ぎながら大粒の雨に打たれて思う訳ですよ。

自分の誕生日に雨ってだけでテンションが下がる。
天候は操れるものではないので仕方がないといえばそれまでだけど。
実に自己中心的かもしれませんが、せめて、こう、さぁ…

「一年に一度なんだから2人を会わせてやれっつーの」

ぽつりと洩らした言葉なんて雨音に掻き消されるだけ。
偽善者ぶってるって事くらい、わかってる。
それでも、誰にとっても平凡なこの日を自分は幸せに過ごしたいだけなんです。

「夏ポテトより期間が短いんだぞって話だよバーカ!」
「お前がバカ」

雨音を切り裂くように耳に届く、いかにもかったるそうな声。
今日はオレの誕生日な訳で、貰う言葉といったら大体は「おめでとう」なのに。
こんなスペシャルデーに酷い言葉を投げかけるほど、君はエスだったっけ?
振り向かなくてもわかる。

「風邪ひくぞ。とっとと入れよバカ」

大してでかくもない傘に引き入れられる。
コレって雨ざらしになった捨て犬を拾う気分に似てませんか?
問いはまたも雨音に掻き消される。

聞けば、任務帰りに雨ざらしの子犬くんを見つけたんだってさ。
シカちゃんの良心は痛みますよね。
見知った子犬くんだもんね。
見捨てられるハズがないよね。
傘だってさしかけちゃうよね。
そらー御苦労なこって。

雨のせいだ。
心がとても荒んでいる気がしてならない。
すきなのに吐き捨てるような言葉しか出ないなんてさ。
それなのに、少々乱暴に掴まれた腕が熱くってならない。

「一つだけ言う事聞いてくんね?」
「あ?」
「シカマルの温もりがほしいデス」

殴られた!ひっでーの!

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2006/08/03




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88.手探り

部屋の電気はまだつけていなくて。
だから僕はいのの顔が見えなかった。

手をそっと持ち上げる。
いのの頬に触れた。
くすぐったそうな声を出したいのは、それでも僕の名前を呼んだ。

愛しい。
なんて愛しい。

小さい頃からずっと側にいた存在。
毎日のように聞く声。
見る顔。
いるのが当たり前の存在。
なんで、今更こんなに愛しいんだろう。

初めて抱く感情じゃないんだ、きっと。
でも心のどこかでずっと何かが引っ掛かっていて、それをどうにかしなくちゃ駄目な気がした。
僕はどうにか出来たのだろうか?
今もわからない。
ただわかるのは、いのの柔らかいほっぺたの感触だけ。

「…すきだよ」

声に出した分、どんどんすきになっていく。
さっきよりももっと。
ずっと。

すきって気持ちはいつまで有効なんだろう?
僕はきっとずっと前からいののことがすきで、すきで、すきすぎて。
大切にしたくって、だから壊したくなくって。
触る事すら恐れていた。

僕とシカマルどちらかが欠けてもいのはいのじゃいられなかった。
シカマルが悪い訳じゃない。
ただどちらかが出っ張ってもいけなかったんだ。
シカマルの穴をうめる訳じゃない。
ただ、シカマルの分、僕も少しは出っ張るべきだと今は思う。

この気持ちは「すき」なんて言葉じゃ到底足りない。
足りないけれど、残念ながら僕はボキャブラリーが貧困なので他の言葉が見つからない。
愛を囁くなんてそんな事できやしないけれど。
ありきたりの言葉で、君に愛を捧げられたらと思う。

なんて不器用な僕ら。
手探りで愛を求めてる。

頬に触れた手をそのままに、今君に口付けをしよう。

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2006/06/06




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89.泡

泡みたいな人だと思った。
掴もうとしたらするりと消えてしまう様な、きれいな人だと。

「キバ、おいで」

手をひょこひょこ動かして胡座の上に座るよう促される。
少々の恥ずかしさを持って、それでも嬉しくてちょこっと座る。
抱き枕のように後ろから抱きすくめられ、頭の上に顎が乗った。
手が冷たい。

時々思う。
触れる手は何か別のものを触っているような気がする。
二回りくらい大きなこの手が忍の物にしては長く骨格がいいことを知っている。
笑う目も何処か別の場所を見ている気がする。
ほんの少し虚ろげな眠たげなこの目は瞳孔が開くくらいになるのを知っている。

ふわふわふわふわ。
儚くて切なくて苦しくて。
そんな感情をすべて無節操にぐりぐりと押し付けてくるのにどこか嬉しくてならない。

守られている。
けれども、守りたいと思う。

ニコニコしながら平然と言う、

「君をさあ、きれいに殺してはく製みたいにして飾っときたいっていっつも思うよ」

このどこか欠落した大人を。

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2007/06/21




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