二人はどういう関係かと聞かれたとするならば。

『15歳差』
『同性』
『同じ里』
『同じ班』
『上忍と下忍…もとい中忍』

これらを考慮した上での答えは上司と部下、もしくは先生と生徒という他ないだろう。
それ以上でもそれ以下でも、ない。

そう、先生と生徒なのだ。
二人は。



『先生と生徒』



真っ青な空はキライじゃない。
だが、雲があった方が変化があっておもしろい。
いつもの様に寝転がった頭の下で両腕を交差し、空を見上げて思った。
風がふんわりと吹く。
木陰に休めた身体の上に、ゆっくりと落ち葉が舞い、落ちる。
それを見、何事もなかったようにまた空を仰ぐ。
静かだ。
だが、この束の間の平穏を決まって壊しに来る人物をシカマルは知っていた。

「よう」

ホラ来た。
『今日は任務はないが、各自で修行するように。』
そう言った、担当上忍。

分かっているんだ、本当は。
各自でなんて言っても、第十班は絶対に修行をしない事を。
そして彼はそれを咎めたりする事が絶対にない事を。

銜えタバコの髭面は190もある巨体。
自分が寝転んでいるせいだろう、その顔はとても遠くに見える。
この上忍は紛れもなく自分の上司であり先生だ。
違いない。

「おう」

チラリと視線をよこしてやった。
丁度視界に入っていたので、眼球を動かすだけで本人を捕らえる事ができた。
逆光で表情はあまり読み取れなかったが、多分笑っているのだろう。
お前はいつもここだな、と。
案の定、そのままのフレーズがアスマの口から出た。
別にいいだろ。
ああ、構わねぇよ。見つけやすいしな。
飛び交うのはいつもと変わらないやりとり。
変わった事と言えば、一ヶ月程前から自分も同じベストを羽織るようになった事くらいだろう。
一ヶ月も着ればそれなりに様になるが、それでもアスマの年期とは比べ物にならない程真新しかった。

同期の中で自分一人頭が飛び出てしまった。
第十班での任務は相変わらず続いているが、それとは別に中忍としての任務も増えた。
雲が形を変えるように、自分の環境もこうして少しずつ変わっていくのだろう。
不安が少しもないといえば嘘になる。
けれど、この大人に少しでも近づいたのだと思うと何故だか無性に嬉しく思えた。
きっとそれは子供特有の背伸びなのかもしれないけれど。

「将棋でもすっか」

空から降ってくる心地よい重低音に頷いて肯定の意を表す。
いつもこの時に発生する何とも言い難い空気がすきだ。
柔らかくて、暖かくて、ついつい身体を預けてしまうような、それ。
素肌で毛布に包まっているような気持ちよさ。
それが何なのかシカマルにはわからなかったけれど、きっと大事なのだろうと思った。

起き上がり、一度伸びをする。
一昨日以来だ、アスマとの将棋は。
雲の様に変化するアスマの動きは、いつ戦っても飽きる事などない。

常に変化する日常の中で、当たり前の様に組み込まれている将棋というパーツ。
これは空気と一緒なのかもしれない。
そうであるのが当たり前なこの環境は。
無くなる事がなければいい。
揺らがないで欲しい、この日常だけは。

背中に付いた草を払い、既に先を行くアスマの後を追った。

どんなに月日が流れようと、2人は先生と生徒だった。

そう、先生と生徒だったのだ。
二人は。





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多分2005年産。(06/11/05 発掘)
『アスシカで10+aのお題』




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