将来の夢は爺さんになるまで生きて老衰で死ぬことです。
それなのに、いつの間にか死と隣り合わせの人生になってしまっている。
これだから人生設計は難しい。

プカプカと煙草をふかしているアスマはいつも見ているしそれが当たり前の風景だ。
それなのに、将棋をしている時に何故か一度も煙たさを感じたことがなかった。
大抵庭の景色を眺めながら、太陽の暖かさを感じながらしている為、常に風は吹いているというのに。

気付いたのはついこの前。
微かな風向きの変化に合わせ、煙草を持つ手を変えたり灰を落としたり。
こんなバカみたいな気を使っているからいつも勝てないんじゃないのだろうか。
勝てないんじゃなくて勝たないんだろうか。
つらつらと考えつつ、決して手の抜いているとは思えないその太い指を眺めていた。

「次、いつやろうか」

ふと盤の上に落ちた言葉を拾い上げると胸がぐっと締まった。
互いの休日など被ることが珍しい。
今日だって、わざわざアスマが有休を使って合わせてくれたのだ。
昨日まで長期任務だったのに。
明日もまた隣の国に行かなくてはいけないのに。

「アスマが死ぬ前までに、もう一回くらいはしときたいな」

多くは望まない。
忍だから。
男だから。

「何だそりゃ」

はは、と笑った重低音。
これでも本気なんだけど。

「……アスマは、」

一度区切ると、何だと思って視界に入れるだろう?
目に焼きつけておいてくれ。
オレの勇姿を。

「肺ガンで死ね」
「…了解」
「それかオレが殺してやる」

視線は逸らさない。
逸らさせない。

「あー、それも悪くないな」

飄々と言いやがってコノヤロウ。
殺せないとでも思ってんのか。
甘いんだよ。
人間の感情表現にはいくらでも醜い方法があんだよ。

「でもお前、オレがいないこの世なんてなんも面白くないだろが」

疑問系じゃない、こういうところが堪らなく。
引かれるんだ。
悔しいくらいに。

「え、もしかしてさみしいの?」
「勿論。シカマルがいないオレの世界なんて27年で十分だ」
「それでもなかなか長いけどね」

たったの3年が9倍以上の支配力を持つのはなかなか気分がいい、と。

信じかけた秋。

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書:2006/09/15
上:2006/09/22

ほくさんが漫画化してくれました。ありがとう!『C:02』です。

謝々:Vanira@恋愛中毒

セリフで5のお題
┗01:「あー、それも悪くないな」




fcさんありがとう。
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