30.命

人はいつか死ぬよ。

そんなフレーズを、自分は確かに言った。
頭ではわかっているんだ。
心が追いつかないだけで。

あの人とは酷い別れ方をした。
喧嘩別れというか何というか。
擦れ違ったまま、時は流れた。
そして、あの人は去った。
懺悔の言葉すら、もう届かない。
後悔だけが私を蝕んでいく。

初めは涙すら出なかった。
悲しくなかったんじゃない。
信じられなかったのだ。
嘘だろう?
だって、まだ謝っていないのに。

プツリと何かが切れた。
途端、嗚咽を洩らすような呻き声を上げた。
涙が止まらなかった。
しゃくり上げた声が不安定なまま空に散っていった。

あの時の私はあれが最後の別れだとは思いもしなかった。
数年の月日が溝を埋めてくれると。
また引き合わせてくれると。
根拠も無しに確信していたのだから。

人はいつか死ぬよ。

いつなんてわからない。
人は儚い生き物だから。
後悔の無いように生きよ。
取り返しが付かなくなる前に。

どうぞ安らかに。
そして御冥福を。

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2005/09/26

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